SiCに関する技術情報

バリガー(Baliga)の性能指数


BFOM(バリガー性能指数:低周波)=εμeEc3、BHFFOM(バリガー性能指数:高周波)=μeEc2で定義される。ここで電子移動度:μe (cm2/Vs)、誘電率:ε、絶縁破壊電界強度:Ec (V/cm)である。MOSFETなどユニポーラパワーデバイスの性能を示すオン抵抗と耐圧はドリフト層の濃度と厚さの依存し、トレードオフの関係がある。破壞電界強度の不純物濃度に依存しないと仮定すると、最適化したドリフト層の構造においてオン抵抗は耐圧の二乗に比例する。この比例係数の逆数がBFOMに比例する。BFOMは物性定数で定まり、パワーデバイス性能の材料固有の限界性能の指標になる。なおBFOMは低周波動作でオン抵抗がパワーデバイスの損失にほぼ等しい状況を仮定していることに注意する。BaligaはMOSFETが高周波で動作している応用が多いことに着目し、高周波動作におけるパワーデバイスの損失をオン状態の損失と入力キャパシタンスによる損失の和であると仮定し、これらの損失の最適化から高周波動作におけるパワーデバイスの性能指標を導いた。この性能指標の耐圧と入力電圧の依存部分を省略して物性定数から定まる部分のみを抜き出したものがBHFFOMであり、パワーデバイスの高周波動作における材料固有の限界性能の指標になる。

(畠山哲夫)