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SiCに関する技術情報

SiCの研究開発を振り返って(中田俊武)

村井さんは、レーザーを用いた研究で業績を上げておられた。本物の研究者だ。親しくしており、SiC半導体の重要さを説いた。その村井さんが、内閣府傘下の総合科学技術会議(霞が関)に、約1年の予定で出向された。彼は、経済産業省傘下の産業技術総合研究所・関西センター(池田市)に所属している。村井さんから、研究コーディネターの堀野さん(同・関西センター)経由でSiC半導体に関して、何らかの提言をして欲しい、という依頼がきた。

 早速、国に対してSiC半導体を国全体で取り組む"何らかの組織"を早急に作る必要があるという提言書(案)を作成した。
だが、一介の研究者モドキでは役不足だろうと思い、京都大学のSiC半導体の大家の松波弘之先生に、提言をして頂くことにした。厳寒の晴れた日、2008年2月8日、松波先生、堀野さんらと霞が関の総合科学技術会議を訪問した。その総合科学技術会議の部屋の窓から国会議事堂が、はるか下に眺められる一室で、奥村議員に松波先生が、講演・提言された。20人程度のお役人が、ジッと聴いていた。

 奥村議員は、新日鉄の副社長だった。その新日鉄時代、SiC半導体の単結晶を研究開発、そして製造・販売するため、先頭に立って指揮されていたから、SiC半導体の物性・電気的特性は勿論、我が国にとって、産業界において、いかに省電力、各種装置の高性能・小型化に役に立つかを熟知されていた。応用は、鉄道・電車・自動車・産業用モーターなどなどだ。奥村議員は、「松波先生にお会いしたかった」と、仰った。

 SiC半導体を、国を挙げて取り組むべきという、"具体的な組織の名称"を挙げられた提言にそって、「SiCアライアンス」が出来た。会長には、京都大学名誉教授の松波弘之先生がご就任。今、「SiCアライアンス」の会員は、企業、大学、研究機関・団体いずれも、我が国を代表するような方々、企業が、参画されている。電機、自動車、装置など製造業の企業だ。SiC半導体と約30年取り組んできて、国が、その重要性を認めて、この組織を設立してくれたことを思う時、感慨深いものがある。

 この組織が取り組んでいるSiC半導体は、基本的に省電力が重要なポイントの一つだ。SiC半導体を、あらゆる産業用モーターに入れれば、日本全国の消費電力の約54%を占める電力消費の低減化につながる。原発は、不要となる。HEV、EVやエスカレーター、エレベーター、エアコン、冷蔵庫などなどのインバーターがターゲットになる。現在、JR東日本、小田急電鉄、エレベーター、エアコン(霧ケ峰)などにSiC半導体を使ったインバーターが使われるようになった。しかし、ここに矛盾がある。それも大きな矛盾! 原発だ。「SiCアライアンス」のメンバーに、日立、東芝、三菱が入っている。この3社が原発を建設している、創エネ。一方、SiC半導体は、省エネだ。3社は、SiC半導体の研究開発もやる。この浮世は、何と矛盾の塊だろう。人は、日々、矛盾、不合理、不条理の中に生きている、と実感する。人は、欲を持たねば、生きていけない。欲があるあるから、物事が進む。イノベ―ションも起こり、快適生活もできる。が、欲を捨てたら、世捨て人になれば、完全に欲を捨てたら……。とかく、この世は、何とおもろい!

 この組織ができてから、しばらくして、東京に出て来いという呼び出しがあった。JR東京駅のビルのレストランで会った。その彼は、元・経済産業省の研究官僚だ。「SiCアライアンスに協力してくれないか」。そのようなことと、予測はしていたが、、。
今度は、「SiCアライアンス」から、呼び出しがあった。正式に、国内外のSiC半導体などに関する調査研究を頼まれた。
この調査に没頭するうち、運動不足もあったのだろう、腰痛になった。しばらくして義義姉が亡くなった。妹が大手術をした。
肉体的精神的に疲れて、この調査研究を止めた。突然で、かつ一方的で、事務局には大変失礼であり、ご迷惑をお掛けした。が、再度、調査研究に似た新たな仕事を依頼された。無料のボランティアなら引き受ける、と返事した。国に奉仕する、というのも面白いかな? SiC半導体の研究開発を始めて30年、こんな人生が待っているとは、予測外だ。これが、セレンディピティなのかな~。

 今後の展開を思う。
 私は、電機会社の研究所に就職した。1965年、半導体の研究開発の研究室に配属され、まず、シリコン、次にガリウムヒ素、ガリウムヒ素燐、ガリウム燐、SiCと、バンドギャップ(電気的能力)が、低いものから、順次高いものへと材料は変わっていった。それに連れ、研究開発の能力も高まっていった。
独立した後、経済産業省傘下の産業技術総合研究所・関西センターの客員研究員になった。そこでは、ダイヤモンド半導体の研究が始まり、いろいろ知恵を絞った。とにかく直径を大きくしないと産業化できない。SiC半導体の単結晶を大きくするアイディアをダイヤモンドに適応することを提案した。住友電工も同様な開発をしていた。研究グループは、よくよく考えて、新規な製法を案出して見事に、、、昨年、2013年、SiCの国際会議(ICSCRM2013、宮崎市)において約2インチ径の板状ダイヤモンドを発表した。今後、2020年から2030年頃には、ダイヤモンド・パワー半導体が実現し、実用化になるだろう。そうすると、「SiCアライアンス」は、「ワイドギャップ・アライアンス」に衣替えするだろう。

 私達の実生活に役立つものは、広く皆様に知って頂くことが、大事だ。SiC半導体は、装置や機器の中に入っており、直接見えないが、例えば、三菱電機の"霧ケ峰"は、世界で多分始めて家電に適応されたもののようだが、その"霧ケ峰"の省電力は、抜群だ。我が家では、遅まきながら2台入れた。

 前々から、提案している。こんなに良いもんは、世の奥様や子供さんに、分かりやすく優しく、こんなに素敵だよ、と宣伝、広めるべきだと。
科学技術を目指す子供が少ないという。ならば、「SiCアライアンス」も、その役目を担おうじゃないか。啓蒙、そのようなことを云う暇は実務に携わっている方々が無理なら、、、、身の周りの方々から始めようかな~。

平成26年5月27日 (火)

   (有)SICセミコン 代表取締役 中田俊武