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SiCに関する技術情報

ライフタイムキラーとキャリヤライフタイム


光照射やpn接合の順バイアスなどによりもたらされた過剰キャリアは、再結合により消失する。過剰キャリアの消失の時定数(過剰キャリア密度が1/e~1/2.7倍になる時間)をキャリアライフタイム(キャリア寿命)と呼ぶ。
間接遷移型半導体では、電子と正孔のバンド間の再結合速度は小さいため、長いキャリアライフタイムを示す。例えば、高純度Si単結晶では1msを超える非常に長いライフタイムを示す。
結晶欠陥(不純物や真性欠陥、転位や積層欠陥)は、バンドギャップ中にエネルギー準位をする場合がある。その欠陥準位を介して、電子-正孔が速やかに再結合する場合、この欠陥を再結合中心と呼ぶ。
複数の再結合過程があると、再結合速度は各過程の再結合速度の和となる。つまり、キャリアライフタイムで言えば、それぞれの過程によるキャリアライフタイムの逆数の和の逆数となる。
  『ライフタイムキラーとキャリヤライフタイム』の画像
この式から分かるように、ライフタイムはもっともライフタイムの短い過程で決まる。間接遷移型半導体では、その材料が本来持っているバンド間遷移のライフタイムではなく、、むしろ、再結合中心によりライフタイムが決まる。短いライフタイムの原因となる再結合速度の再結合中心のことをライフタイムキラーと呼ぶ。
SiCの場合、間接遷移型半導体であるにもかかわらず、一般には1μs以下のライフタイムしか得られず、ライフタイムキラーとなる欠陥の特定および低減を目指した研究が長年進められてきた。最近では、ライフタイムキラーを大幅に低減することで10μsを超えるライフタイムが報告されている。
キャリアライフタイムが大きいほどバイポーラデバイスにおける伝導度変調の効果が大きくなり、結果としてオン抵抗を低減することができる。一方、長すぎるライフタイムはバイポーラデバイスのスイッチング特性を悪化させ、スイッチング損失の増大をもたらす。デバイスの目的に応じて、最適なキャリアラフタイムとなるように設計、制御する必要がある。

(須田 淳)